現代で働くメイドとその雇い主にとって、無視できない存在である法律や働き方のルール。
大切なのはわかっているけど、とっつきにくい〜!
そこで、社労士メイドのレイラさんによる連載「お屋敷のための働き方ガイド」がスタートしました。
第1回のテーマは「社会保険料」について。
早速お勉強をいたしましょう!
この連載は、社労士メイドのレイラの提供でお送りする広告記事です。
皆さま、初めまして。
メイド社労士のレイラと申します。
このたび、小さな連載を始めることになりました。
メイドさんとして働くとき、雇うときに気になるけど、ちょっととっつきにくい――そんな制度やルールを、気軽に読める形でご紹介していきます。
さて、ところで皆さまは「社会保険労務士」という仕事をご存じでしょうか?
たとえば、アルバイトを始めるときに必ず出てくるのが「雇用契約書」や「シフトの管理」、そして「社会保険」や「労働保険」といった制度です。
でも、「これってどう決まってるの?」と疑問に思ったことはありませんか?
社会保険労務士――略して「社労士(しゃろうし)」は、そういった“働くときに必ず関わるルールや働く安心感”を整えたり、お屋敷や働く人をサポートしたりする専門家です。
お屋敷のオーナー様方、そしてメイドさんに向けて、社会保険や労務のお話を、できるだけわかりやすくお届けしてまいります。
1回目のテーマ:『社会保険料が変わります!給与計算にご注意を!』です。
対象は、オーナー様、社会保険に加入しているメイドさんです。
実は毎年10月振込の給与計算では、社会保険料の金額が変わります。
変わる・・・ということは、上がる方もいれば、下がる方もいます。全員が上がるわけではありませんので、ここがポイントです。
なぜ10月払い給与から社会保険料が変わるのか?
それは「算定基礎届(さんていきそとどけ)」という手続きが関係しています。
時々噂で「4~6月は残業しないほうがいいよ」と囁かれているのを聞いたことはありませんか?
実はあのお話は、算定基礎届に由来しているんです。
社会保険料は、毎年7月1日時点で在籍している社会保険加入者を対象に見直しが行われます。
具体的には、4月・5月・6月に振り込まれた給与の平均額をもとに新しい社会保険料が決まる仕組みです。
もちろん、その中には残業代や各種手当も含まれます。
ただし「平均額=そのまま保険料」ではありません。
実際には「標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)」というランク表があり、平均額をこのランク表に当てはめて近い等級を決めます。
その等級をもとに、新しい保険料が計算されるわけです。
メイドさんもベテランになるにつれてお給料が上がることがあります。新人時代と同じ保険料では見合わない、という理由で毎年見直されるのです。
そして、算定基礎届で見直されるのは主に2つ。
健康保険料と厚生年金保険料です。
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健康保険料 → 主に都道府県ごとに料率が異なります(※)。計算式に使う保険料率は毎年3月頃に発表がありますので、チェックしておきましょう。
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厚生年金保険料 → 全国一律の計算式です。
※健康保険の種類が「協会けんぽ」という組織の場合です。多くのメイド喫茶ではこちらが加入先になります。
一方で「健康保険組合」という仕組みもあり、これは大企業や特定の職業団体が独自に設立しているものです。この場合は、保険料率はその組合が独自に決めます。
【参考リンク:協会けんぽ 東京支部の2025年版早見表はこちら】
試しに健康保険料を試算してみましょう。(40歳未満の場合。40歳から別途介護保険料もかかります。)
4月に振り込まれたお給料・・・・18万円
5月に振り込まれたお給料・・・・19万円(うち2万は残業代)
6月に振り込まれたお給料・・・・17万円
※この時、フルタイムのメイドさんはお給料の支払いが17日以上の月を拾います。元々シフトが少ない人は、
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17日以上働いた月がある場合
→ その月も含めて平均をとる -
全部の月が17日未満だけど、15日以上はある場合
→ その15日以上の月だけで平均をとる -
全部の月が15日未満の場合
→ 去年までのまま(変更なし) - メイドさんで1週間2~3日勤務のアルバイト層であれば「短時間労働者」というくくりがあります。こちらは別途11日基準の場合があります。
①平均額:(180,000+190,000+170,000)÷3=180,000円→等級表にあてはめる
②さらに当てはめた180,000円× 0.0991(東京都の総額の保険料率。2025年度版)= 17,838円
③オーナーとメイドさん折半で、それぞれ8,919円が新しい保険料として10月払い給与から天引きされます。
法律、実務的な言い方をすると、9月分の保険料(給与支払は10月)から反映、という言い方をしたりします。
ではここで、計算するときによくある質問・トラブルシューティングをあげてみましょう。
≪オーナー様向け≫
- 『10月の給与計算から反映させるのを忘れそう・・・・』
- 解決方法→毎月の給与計算の準備段階で、見通しを立てておきましょう。9月の給与計算が終わったら、次月への申し送り事項をまとめておくと便利です。ご本人に給与明細を渡す前に、仮で計算結果を見せて説明するのも間違いを防げます。
- 『新しい保険料の等級はどうやって確認できますか?』
- 算定基礎届の手続きが終わると、日本年金機構から「標準報酬月額決定通知書」というタイトルの書類が届きます。その書類に新しい等級が書いていますので、給与計算ソフトもしくは給与計算用のエクセルなどに反映させておきましょう。
- 『算定基礎届を出し忘れてしまいました』
- 気が付いた時点で速やかに年金事務所に相談の上、作成・提出しましょう。日本年金機構からくる、茶色い封筒に記載書類が入っています。
- 『その年の7月1日に在籍している社保加入者は全員同じタイミングで算定の結果が反映されますか?』
- 例外の人もいます!
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6月入社・6月卒業・7〜9月に報酬改定が入る予定の方は、算定基礎届を出す必要はありません。
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随時改定※が予定されている場合は、算定基礎届の報酬欄を空欄にして備考で『月額変更予定者』に〇をつけると審査する人にわかりよいです。
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随時改定(通称:月変)とは・・・「算定基礎届を待たずに、一定の条件を満たした翌月から保険料を変えますよ」という仕組みです。
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通常:4~6月の給与で年に1回だけ見直し(算定基礎届)。
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例外:7月以降に大きな給与変動があった場合、次の年まで待つのは不合理です。この時は月変が優先されます。
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手続き:7~9月に条件を満たす人は「算定基礎届ではなく月額変更届を出す」流れになるのです。
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算定基礎届は年に一度の“定期点検”、月変は突発的に起きる“緊急修理”みたいなものです。
オーナー様、メイドさん、どちらにとっても『実態に合った保険料』を素早く反映させる仕組みです。
- 月変の詳しい条件、説明はこちらから
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- 例外の人もいます!
- 『そもそも忙しくて算定に時間がかけられません。』
- 当事務所 『社労士事務所 さんぽみち』にて提出の代行が可能です。有料とはなってしまいますが、選択肢の一つとしてご参考になさってください。ご依頼はXのDMからでも可能です。
≪メイドさん向け≫
- 『4月、5月、6月振込のお給料で平均をとる、となるとシフト上ではいつ働いた分が反映されますか?』
- お給料の締め、支払日によって変わってきます。
- 例)シフト末締め、翌月25日にお給料支払いの場合・・・シフト上では3月、4月、5月の勤怠が算定に反映されます。
- お給料の締め、支払日によって変わってきます。
- 『保険料が上がらないように、シフトを減らしたいのですが・・・』
- 実はあまりオススメできません。
- 例えば、病気やけがで一定期間お休みすることになった場合、「傷病手当金」という生活保障が健康保険から支給されることがあります。
- この金額は、普段のお給料=社会保険料の基準に連動して決まる仕組みです。もしあえてシフトを減らしてお給料を下げてしまうと、いざというときに受け取れる額も少なくなってしまいます。(実際、コロナ禍では傷病手当金に助けられた人が大勢います)
“目先の保険料を節約するよりも、将来必要になったときの安心を確保する”――そう考えると、無理にシフトを減らす必要はないかもしれません。
オーナー様、メイドさんの目線だと保険料が変わるのはちょっと面倒に思えるかもしれません。でも、その一つひとつは“いざというときの安心”につながっています。10月のお給料明細を開いたときに、『あ、これがあの算定か!』と思っていただけたら嬉しいです。
それでは、次回もまたお会いしましょう。
※本記事はレイラさんが一般的な実務ルールを分かりやすくまとめたものです。個別の扱いは加入先(協会けんぽ/健康保険組合)や事業所の締め日によって異なる場合があるため、詳しくは日本年金機構の該当ページまたは当事務所にご相談ください。
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メイド業界以外でもご相談可能で、他にマッチ度が高い先生がいましたら、そちらにお繋ぎすることもできるとのこと。
社労士メイドのレイラさんにご相談をご希望の方は、レイラさんのXのDMまでご連絡くださいね!
この連載は、社労士メイドのレイラの提供でお送りしました。
